あきゅアーティスト

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  • 【Ricoさん】2012年度あきゅアーティスト Ricoさん インタビュー

    2011年12月07日更新

封筒の中身を窓に光で透かしてみると、中の紙の重なりが影になって見える、という体験は誰もがしたことがあるだろう。
Ricoさんはそんな身近な光を味方につけて、作品作りをしている。
紙を重ねて絵を作り、それを貼り合わせて後ろからスポットライトを当てる、「ひかり絵」という技法だ。


作品のちょっと古ぼけたようなあたたかみは、オランダのれんが造りの街を彷彿とさせる。
それもそのはず、「ひかり絵」を発見したのはオランダに留学していた頃。
通っていた郊外の美術学校で専攻していたイラストレーション科の課題で、紙版画(切った紙を組み合わせ、インクをつけて転写する版画)を使って制作していた。
薄暗い中でスポットライトを当てながらの作業。作品の後ろからそのライトが当たったとき、それが透けていることを見つけた。
「でも、ひかり絵を見つけた学校は1年で辞めてしまったんです。
言葉の壁と、その学校で学べる事が日本でもうやってきた事が多くて。
それに悩んでいた頃、アムステルダムの友達から部屋が一つ空いたと聞きました。
オランダに留学しようと決めたきっかけがアムステルダムだったんです。
以前ヨーロッパを旅行していた時にベルリンから夜行列車でアムステルダムへ行ったのですが、朝、駅に着いて天気が良くって、もう街中がキラキラキラ~って!光の彩度が高くてすっごくきれいだった。
それもあって思い切ってアムステルダムの学校に移ったんです。」


そこで待っていたのはファインアートの世界。
「本当はデザインやイラストの勉強をしようと思っていたのですが、言葉が得意ではなかったので、課題が出ないファインアート(現代アート)科にしたんです。
その学科は他の科よりも自由度が高く、制作内容を自分で決めることが出来ました。
でも最初は、バイト先のお店の名刺をデザインしたり趣味のカレンダーを作ったりと、現代アートらしくないものばかり作っていました。
そんなある日、先生に『せっかく今ファインアート科にいて外国にいるわけだから、アートをやってみたらどうですか』って言われて。
それに納得して、アートらしいことをしようと思ったんです。
だけど何をしたらいいか分からなくて悩みました。周りの学生の作品もわかりにくいものが多いし。
あまりにもわからないから、先生にも「What is Art?」って聞いてみたり。」


そんな時、突破口になった作品のアイデアはやはり身近な気づきだった。それは1歳から100歳の人の声を録音した作品。
「きっかけは日本人学校にお手伝いに行った時、教室で朗読をするこどもの声を聞いて、大人では出せないかわいらしさがとても気になったんです。そこから声の年齢の違いって面白いなって。」
同時にオランダには様々な人種の人がいることにも面白みを感じ、母国語で自分の年を言ってもらうことにした。声を録った人の手も撮影し、目に見える形にもした。
なんとも聞いただけで気が遠くなるプロジェクトである。
「とにかくすごく大変で!もうノイローゼになるかと思いました(笑)
20~40代の人を見つけるのは簡単なんですけど、80~90代はすごく難しい。特に90代はほとんどオランダ人しかいないんです。
でもいろんな国の人を混ぜたくって老人ホームに足繁く通いました。
完成までに1年以上かかってしまって、前に行った老人ホームにしばらくしてから行くと、前に協力してもらった人が1歳繰り上がってたり、亡くなっている人がいる。
老いとか死についていろいろと考えました。」

そう言いながらその作品の一枚の手をながめた。
「これおじいちゃんの手ですね、もう亡くなっちゃったんですけど。見るとすぐに誰かわかります。」
この作品を通してRicoさん自身の中に深くオランダでの生活とアートに対する考えがきざまれていったのだろう。


「アートは自由で制約がない。好きな事をやらないと損!ということが分かったんです。
最初はすごく苦しんだんですけど、その時感じだことは今にも繋がっています。
今やっているお仕事では、構図やモチーフの指定があってそれを起こすっていう事もあるし、自由に作って良い時もある。
自由にやれるのは、楽しいですけどアイデアの段階でけっこう苦しんだりします。どちらの時も楽しくしながら作れればいいなって思っています。」
そして自由な制作の時はあまり意図的なことは考えないようにしているという。
「考えだすと分からなくなって苦しくなるので、なりゆきに任せて、その時の思いつきを大事にしています。
だから作り終わってから、こういうのができちゃったから、こういう事考えていたのかな、と分かる事もあるんですよ。
ただ、それだと依頼と全然噛み合わない時もあるので、一度自分なりに解釈してから作りますが、ガチガチにならないように絵柄は思いつきにしてます。」




やわらかな発想で身近なものを作品にしていく。
Ricoさんの作品はこれからも発見をたくさん重ねて輝いてゆくだろう。
2012年度のあきゅ便りのひかり絵、どうぞお楽しみに。