あきゅアーティスト

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  • 個展レポート 『坂巻裕一 いのち』

    2011年03月07日更新


「アーティストとして絵を描きました」と、語ってくれたのは『あきゅ便り』のデザインや『はじめましてBOOK』のイラストなどでおなじみの坂巻裕一さん。
2月に行われた個展では、あきゅらいずでの仕事とはかけ離れた作風に、驚かれた方も多いはず。
「現在のような無対象(見えるものを描かない)の作風になったのは、2006年に即興パフォーマーの向井千惠さん(http://www.kilie.com/mukai/)や富士栄秀也さん(http://freeimprovisation.web.fc2.com/mem0fujie.html)らと共演してからです。
演劇などのポスターをつくるのが好きだったので、向井さんのウェブサイトでスタッフを募集しているのをみつけ、はじめは宣伝デザインで関わりたいと思って連絡したんです。」

しかし顔合わせを兼ねてワークショップを見学しに行くと、なぜか次の公演に出て絵を描く事になってしまったのだとか。
「その時は事前に大筋の流れを考えて、みんなが見たことがあるものをエンタテインメント的に描きました。
でも、『今』を大切に表現する人たちに触れたことで、ライブなんだからもっとその場にまかせてみようと思うようになったんです。
それまでは自分がこんな作風になるとは思ってもいませんでした。学生の頃、抽象画を描く友人に『気が知れない』と言っていたくらいですから。」
そもそもファインアート(絵画などの純粋芸術)に向かっていったのは、デザインの仕事をしていくうちに生まれた気持ちからでした。

「自分の中から何が出てくるのか知りたくなったんです。
はじめは何かしらの『問題』を抱えてやって来る相手に、僕がデザインで解決してあげて、喜んでもらえるのが嬉しかった。イラストで『描く』欲求も満たせたし。でも次第に、うまく回答することはできるけれど、根本の『問題』は自分で見つけ出したものではないということに気付いたんです。
そして向井さんとの件も後押しになり、音楽イベントなどで絵を描くようになりました。」
展示の初日、向井さんと富士栄さんのパフォーマンスがありました。
会場の空気やパフォーマーの気分によって、この日この場所でしか生まれ得ない音や振る舞いです。
坂巻さんが即興という分野に出会い、無意識を大切にする今に至ったのは、自身の深くに根付く個性を探る最適な手段だったからなのでしょう。
「今回の絵は美しいって何だろうっていう問いでもあります。
人でいえばモデルのように容姿が整っていなくても、がむしゃらにがんばる姿が心を打つことがある。無心の状態や真実ってきれいごとじゃないでしょう。そんな美しさが現われることを願って、なるべく体裁良くまとめまいとは思ったんですが、身に染みたデザイン力は無意識に出ちゃいますね。あれ、無意識だから良いのかな?ぐるぐる。」
そんな悩みをかかえた手元に、次の作品のインスピレーションが転がっていました。
「絵を描いているときふとパレットに目をやると、そこに画面以上の無意識が広がっていて...。今度はそれを手がかりに何かできたらなあと考えています。」
...想像するだけで、ああ楽しそう!

2011年2月インタビュー